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キッチンをバリアフリー化したい!車いすや高齢者でも使いやすいキッチンとは

バリアフリーキッチンとは、車椅子利用者や立ち仕事がつらいお年寄りでも簡単に料理ができるように設計されたキッチンです。
キッチンのバリアフリー化は、安全性や利便性を高めるだけではなく、使用者の自立にもつながるため注目されています。
本記事では、一般的なシステムキッチンとバリアフリーキッチンの違いや、バリアフリーキッチンを使いやすくするポイント、リフォームにかかる費用などを紹介します。
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目次
バリアフリーキッチンをより快適に!使いやすいキッチンにするポイント5点
バリアフリーキッチンは、車椅子利用者やお年寄りの目線に立ったキッチンです。
では、車椅子利用者やお年寄りの目線に立ったキッチンとはどのようなものでしょうか?
一般的なシステムキッチンの機能と比較しながら、使いやすいキッチンにするポイントを以下の項目に分けて紹介します。
- スイッチを集める
- キッチンカウンターの下にスペースをとる
- 浅型シンクにする
- 高さを調整する
- 実際に見てから決める
それでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
ポイントその1:スイッチを集める
ライフスタイルに合った高さにスイッチを集めると快適で使いやすいキッチンになります。
一般的なシステムキッチンは、吊戸棚や換気扇のスイッチが高いところにあります。
そのため、車椅子利用者は車椅子から立ち上がらなければなりませんし、足腰の弱いお年寄りは、台に登るといった無理な姿勢をとらなければなりません。
こうした動作は火や刃物があるキッチンではとても危険です。
吊戸棚にはスイッチ操作で昇降し、座ったままでも使用できるものがあります。
また、換気扇にはワイヤレスリモコンを採用したものが増えてきています。
バリアフリーキッチンは、こうした設備を導入してライフスタイルに合った高さにスイッチを集められるのでおすすめです。
ポイントその2:キッチンカウンターの下にスペースをとる
キッチンカウンターの下にスペースをとると座ったままでも料理ができる使いやすいキッチンになります。
一般的なシステムキッチンは、キッチンカウンターの下に扉付きの収納棚が設置されています。
そのため、車椅子利用者は足や膝が当たってしまい、立ち上がるか前傾姿勢をとらなければ料理ができません。
各メーカーにはキッチンカウンターの下に収納棚がなく、オープンになっているバリアフリーキッチンがラインアップされています。
これであれば、車椅子利用者でも足や膝が当たることなくキッチンカウンターに接近できるので、安心して料理ができます。
また、立ち仕事がつらいお年寄りも座りながら料理ができるのでおすすめです。
ポイントその3:浅型シンクにする
浅型シンクにすると座ったまま洗いものができる使いやすいキッチンになります。
一般的なシステムキッチンは、キッチンカウンターの高さが80〜90cmで設計されており、シンクの深さは20cmです。
そのため、キッチンカウンターの下をオープンなものにしても、車椅子利用者の膝がシンク部分に当たってしまい、洗いものや水洗レバーの操作が十分にできない場合があります。
その場合、シンクの深さを12cmにした浅型シンクを採用しましょう。
浅型シンクであれば、車椅子利用者の膝周りに8cmの余裕が生まれるので、キッチンカウンターの下に深く膝を入れられ、快適に洗いものができます。
また、シンクにしっかりと接近できるため、水洗レバーの操作やシンクの掃除も簡単に行えるのでおすすめです。
ポイントその4:高さを調整する
キッチンカウンターの高さを調整すると、使いやすいキッチンになります。
国土交通省が2021年3月に公表した建築設計標準には、車椅子利用者の目線は110cm、手の届く範囲は60cmと記載されています。
一方で、一般的なシステムキッチンは、キッチンカウンターの高さが80〜90cmで設計されているので、車椅子利用者にとっては使いづらいキッチンといえるでしょう。
バリアフリーのキッチンカウンターの高さは73〜80cmに設計されているものがあり、1cmきざみで高さを選ぶことが可能です。
車椅子利用者の膝が余裕をもってシンクの下に入れられ、キッチン全体が見渡せる高さを選べば、バリアフリーキッチンは安全で快適なキッチンになります。
また、お年寄りの方がイスに座りながら料理をしたい場合は、イスに深く座った状態で肘が90度前後に保てるような高さを選ぶと使いやすいキッチンになるのでおすすめです。
ポイントその5:実際に見てから決める
バリアフリーキッチンの採用は、実際に見てから決めることをおすすめします。
バリアフリーキッチンは利用者の体格や好みによって安全性や利便性は大きく異なります。
そこでおすすめなのが、バリアフリーキッチンを実際に見て、触れて、体感してみるということです。
TOTOやタカラスタンダードなどの住宅設備機器メーカでは、ショールームを展開しています。
バリアフリーキッチンのショールームは、需要と注目の高まりに合わせて増えつつあるので、ぜひ一度足を運んで体感してみましょう。
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キッチンバリアフリーに費用はどのくらいかかる?
キッチンのバリアフリー化には、大きく分けて以下の2つがあります。
・バリアフリーキッチンを取り付ける部分的なリフォーム
・段差の解消や水回りの設備を一新する全体的なリフォーム
ここでは、部分的なリフォームと全体的なリフォームにかかる費用を紹介するとともに、
安全性や快適性を高めるためのリフォーム費用などを以下の項目に分けて紹介します。
- 全体リフォームにかかる総額
- バリアフリーキッチンのキッチン本体価格と取り付け費用
- 手すりの設置にかかる費用
- 段差の解消工事にかかる費用
- 昇降機能の取り付けと工事にかかる費用
- 滑りにくい床材への変更や床暖房の導入にかかる費用
それでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
費用その1:全体リフォームにかかる総額
住宅全体のバリアフリー化を行う場合、段差の解消やトイレや浴室の改修、バリアフリーキッチンや手すりの設置、これらに関わる壁紙や床材の張替が必要になります。
工事を依頼する業者や取り入れる商品のグレードなどで費用は大きく変わりますが、概算で1000万円以上かかるでしょう。
車椅子の利用を想定する場合は、こうした全体的なリフォームが必要になります。
一方、老後やお年寄りのケアを目的としたキッチンのみのバリアフリー化であれば200万円前後の費用で部分的なリフォームを行うことが可能です。
費用その2:バリアフリーキッチンのキッチン本体価格と取り付け費用
バリアフリーキッチンの本体にかかる費用は50万円前後です。
住宅設備機器メーカーが提示しているバリアフリーキッチンの定価は、15万円〜120万円前後と幅広く、大きさやグレード、用途によって大きく異なります。
例えば、LIXILの「ウエルライフシリーズ」は、一般的なシステムキッチンと遜色のないバリアフリーキッチンとして、100万円前後の本体価格が設定されています。
また、タカラスタンダードの「ライフサポート商品」では、ミニキッチンタイプのバリアフリーキッチンが用意されており、本体価格は15万円前後です。
このように、様々なバリアフリーキッチンがあるのでライフスタイルや予算に合ったものを選ぶとよいでしょう。
バリアフリーキッチンの取り付け費用は10万円前後が相場ですが、壁紙の張替えや床材の張替え、給水管や排水管の移設など、付随工事が発生する場合は別途費用が必要です。
費用その3:手すりの設置にかかる費用
バリアフリーキッチンには、キッチン自体に手すりを設置できるものがあります。
キッチン内に手すりがあるとキッチンスペース内で車椅子を回転させる際や立ち上がる際の補助にとても役立ちます。
また、キッチンまでの動線に手すりを設置することも、安全性を高める有効な方法です。
手すりの設置には、50cmあたり1〜3万円程度の費用がかかりますが、介護保険の住宅改修支援制度などを利用すれば費用負担を減らせます。
費用その4:段差の解消工事にかかる費用
バリアフリーキッチンを採用した部分的なリフォームでも、玄関の框(かまち)の段差やキッチンまでの動線にある扉やちょっとした段差など段差の解消工事は必要です。
玄関の框の段差を解消する場合、踏み台を設置する方法やスロープを作る方法があり、2万円〜20万円程度の費用がかかります。
キッチンまでの動線にある段差を解消する場合、扉を交換する方法やちょっとした段差にスロープを設置する方法などがあり、2万円〜15万円程度の費用がかかります。
費用その5:昇降機能の取り付けと工事にかかる費用
スイッチ操作で昇降する電動式吊戸棚は、車椅子利用者や足腰の弱いお年寄りでも無理な姿勢をとることなく安全に利用できるため、キッチンバリアフリーの1つとして有効です。
電動式吊戸棚の導入には本体費用5万円〜8万円程度、取り付け費用2万円程度がかかります。
キッチンバリアフリーの1つとして電動式吊戸棚を導入する際は、立った状態と車椅子などに座った状態で使いやすい高さが変わる点に注意しましょう。
費用その6:滑りにくい床材への変更や床暖房の導入にかかる費用
キッチンのバリアフリーを行う際は、住宅設備の改修や段差の解消だけではなく、床材の変更も大事なポイントになります。
一般的なキッチン周辺の床材は滑りやすく硬いため、車椅子利用者や足腰の弱いお年寄りの転倒やけがに繋がります。
こうしたリスクを避けるためにも、滑りにくい床材やクッション性に優れたコルクなどへの変更を検討するとよいでしょう。
また、冬場のキッチンでは、スリッパを履いていたが故の転倒リスクや、ヒートショックのリスクが高まるため床暖房の導入も検討の余地があるでしょう。
床材の張替えは、選ぶ材質にもよりますが、6畳あたり10万円前後の費用がかかります。
また、床暖房の導入には、採用するシステムや工法にもよりますが、1畳あたり5万円〜11万円前後の費用がかかります。
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バリアフリーを検討する前にやるべきこと
バリアフリー化は、大きな工事になりやすく、費用も膨らみやすいものです。
そのため、バリアフリー化を検討する前にやるべきことは意外にも多くあるので、以下の項目に分けて紹介します。
- ケアマネージャーや家族との話し合い
- マンションアパートの時は管理規約の確認と周りへの配慮
- 想定している工事が可能かどうか業者に確認
それでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
その1:ケアマネジャーや家族との話し合い
バリアフリー化を検討する際は、事前に費用面やリフォーム内容などを家族と話し合う必要があります。
特に同居家族が多く、年齢にもばらつきがある場合は、それぞれのライフスタイルを阻害しないリフォームプランが必要になるので、費用や内容のすり合わせを入念に行いましょう。
また、バリアフリーリフォームの場合、介護保険の住宅改修支援制度や自治体が行っている補助金を利用できるため、ケアマネージャーとの話し合いや情報交換も必要です。
ちなみに、介護保険の住宅改修支援制度は、介護保険に記載された住所のリフォームにのみ適応されるので、転居先のリフォームを行う場合は事前に手続きする必要があります。
その2:マンションアパートの時は管理規約の確認と周りへの配慮
マンションやアパートに住んでいる方がバリアフリー化を検討する際は、事前に管理規約を確認しましょう。
集合住宅には共用部分と専有部分があり、共用部分への影響があると判断された場合はリフォームができないこともあります。
また、電気容量やガスメーターのサイズを変更できない場合や、各種配管の移設を禁止している場合があるので、リフォーム内容を管理会社に確認するとよいでしょう。
様々な確認が済み、リフォームを行う際は、工事実施の事前周知や挨拶まわりなど、周囲への配慮を忘れずに行いましょう。
その3:想定している工事が可能かどうか業者に確認
バリアフリー化の検討が進み、希望するリフォームプランが決まったら、実績のある業者を選び工事実施が可能かどうか確認しましょう。
実績のある業者は、様々な施工事例からより良いプランを提案できます。
施工業者の中には、福祉住環境コーディネーターの資格を持った方もいるので、より良いリフォームを追及するのであれば、有資格者のいる業者を探すとよいでしょう。
また、複数の業者から見積りをとる際も業者との接点になりますので、時間を惜しまず多くの意見を聞くことをおすすめします。
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失敗したくない人へ|バリアフリーキッチンの工事業者の選び方
バリアフリーキッチンへのリフォームは、費用や今後のライフスタイルを考えると失敗したくないものでしょう。
そこでポイントになるのが、リフォーム業者の選び方です。
本記事では、以下の項目に該当するリフォーム業者をおすすめしますので参考にしてください。
- バリアフリー化の知識や経験のある業者を選ぶ
- 提案内容が自分に寄り添っていると感じられる業者を選ぶ
- 介護保険や減税の制度に詳しい業者を選ぶ
それでは、それぞれの項目について詳しく解説します。
選び方その1:バリアフリー化の知識や経験のある業者を選ぶ
バリアフリーキッチンへのリフォームは、経験や知識のある業者を選びましょう。
経験が豊富な業者であれば、実例をもとにした様々な提案や、突発的な問題への迅速な対応が期待できます。
また、業者に深い知識があれば、導入する設備や工法について、しっかりとした説明が期待できるので安心です。
知識のある業者を選ぶ上では、福祉住環境コーディネーターやキッチンスペシャリストなどの資格の有無も判断基準になるので、業者を選ぶ際は確認するとよいでしょう。
選び方その2:提案内容が自分に寄り添っていると感じられる業者を選ぶ
リフォームのイメージを共有した上で、具体的な提案をしてくれる業者を選びましょう。
バリアフリーキッチンをはじめとする様々なリフォームは、居住者の生活を快適なものにするための工事です。
そのため、希望するリフォームに沿った提案をしてくれる業者かどうかが、業者選びの判断基準になります。
また、信用しすぎてはいけませんが、インターネット上の口コミやレビューなどから、親身になってくれる業者かどうかを知ることができるので、参考にするとよいでしょう。
選び方その3:介護保険や減税の制度に詳しい業者を選ぶ
バリアフリーキッチンをはじめとするバリアフリーリフォームは、様々な補助金や減税措置の対象になるため、介護保険や減税の制度に詳しい業者を選びましょう。
バリアフリーリフォームは、介護保険の住宅改修支援制度や厚生労働省が行う減税制度を利用することで個人の費用負担を軽減できます。
これら以外にも様々な支援制度があり、中には大規模リフォームにも適用できる制度があります。
こうした制度に詳しい業者であれば、制度の申請や手続きも安心して行えますので、業者を選ぶ際の判断基準にするとよいでしょう。
尚、補助金は事前申請なので余裕をもって調べましょう。
制度その1:介護保険
介護保険の住宅改修支援制度とは、要介護認定が下りている方が住む家を、介護を目的としてリフォームする場合に申請できる制度です。
この制度を利用すると、対象工事費用20万円を上限として、1割の自己負担を除く最大9割の18万円が支給されます。
ただし、リフォーム内容に制限があり、事前事後の2回の申請が必要です。
これら以外にも細かな条件があるので、制度を利用する際はしっかり調べましょう。
また介護保険以外にも、自治体の助成金制度や減税制度を利用すると費用の負担はさらに軽減できる可能性があります。
制度その2:リフォーム減税
所得税の特例措置として、バリアフリー特定改修工事特別控除制度があります。
この制度は、要介護認定を受けているなどの家屋の適用要件や、浴室改良などの改修工事の要件など、様々な要件に合致した場合に200万円を上限とした控除が受けられる制度です。
バリアフリー特定改修工事特別控除制度の申請は、必要書類が多いのでリフォーム業者と連携して手続きを進めるとよいでしょう。
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まとめ:バリアフリーキッチンで暮らしやすさと安全を手に入れよう
バリアフリーキッチンについて多角的に紹介してきましたが、いかがでしたか?キッチンをバリアフリーにすることで、車椅子利用者やお年寄りでも安全に料理ができるようになります。
そして、キッチンが快適なものになれば、車椅子利用者やお年寄りの暮らしにもハリが生まれます。バリアフリーキッチンへのリフォームは、安全性や快適性の向上だけではなく、様々なプラス効果が有るのでおすすめです。