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リフォームと建て替えはどちらが安い?判断基準も解説

長く住んだ住宅は時間の経過によって劣化するため、修理や修繕などの手間がかかりやすいです。手がかかるようなら一度大規模な改修を行うこともおすすめですが、このとき全面的なリフォームをするか、それとも建て替えてしまうのかで悩むことは少なくありません。
本記事では、リフォームと建て替えはどちらの方が安いのかといった情報に留まらず、それぞれの違いや判断基準となるポイントについて解説します。
POINT
戸建てをフルリフォームする際の費用相場は600万~1,200万円、建て替えは1,100~2,700万円程度かかる
リフォームか建て替えかで悩んだら、費用や間取り変更の自由度、住宅の傷み具合などで判断するとよい
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>>リフォームの費用相場
目次
リフォームと建て替えの比較
まずは、リフォームと建て替えの違いについて見ていきましょう。
リフォーム | 建て替え | |
---|---|---|
定義 | 老朽化した建物や設備を、新築時に近い状態に修復する | 既存の建物を解体して、新たな建物を建てる |
工事費用 | 600~1,200万円 | 1100~2,700万円 |
工事以外の費用 |
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工事期間 | 短い(1〜5ヶ月が目安) | 長い( 3〜8ヶ月が目安) |
メリット |
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デメリット |
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リフォームは建て替えと違い、現在ある住宅の活かせる部分を活かしながら修復していきます。
建て替えにくらべコストはかかりませんが、部分ごとに修復を重ねていくと、最終的に割高になってしまうことがあります。
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【判断基準1】リフォームと建て替えの費用相場
リフォームと建て替えのどちらを選択するか悩む際には、それぞれの費用相場を参考にすることがおすすめです。以下で、フルリフォームする場合値と建て替える場合の費用相場を、坪数ごとに紹介します。
坪数 | 戸建て住宅をフルリフォームする場合の費用相場 | 建て替えて新築にする場合の費用相場 |
---|---|---|
20坪 | 600万円 | 1,100万円 |
30坪 | 850万円 | 1,600万円 |
40坪 | 1,000万円 | 2,000万円 |
50坪 | 1,100万円 | 2,500万円 |
60坪 | 1,200万円 | 2,700万円 |
どちらにしても高額な費用がかかりやすいため、余裕を持って予算を組み、適切なほうを選ぶことが大切です。
戸建て住宅をフルリフォーム:600~1,200万円
戸建ての住宅を全面的にリフォームする場合は、600~1,100万円程度と高額な費用がかかりやすいです。全箇所をまとめて行うなら仮住まいを用意する必要があり、ここへの引越し費用や敷金や礼金などの初期費用、生活費なども必要でしょう。
物が多い場合はトランクルームを借りるなどして対処できますが、この時も月額数万円程度の費用がかかります。仮住まいをする場合は1回の引越しで30~50万円程度、初期費用を含む生活費で40~100万円程度かかることが多いです。
結果的に、高額な費用になることもありますが、リフォームでは補助金制度が適用できる場合もあるため、積極的に制度利用することも大切です。例えば、耐震性の向上や省エネ化、介護のためのリフォームなら補助金が適用できる場合があり、20~100万円程度支給されることもあります。
制度によって適用条件や申請方法は異なるため、リフォームを依頼する際に施工業者に利用できる補助金制度はないか相談してみるとよいでしょう。
建て替えて新築にする:1,100~2,700万円
現在あるものを取り壊し、新たに新築する場合は1100~2,700万円程度の費用[/text]がかかります。新築費用が高いのは、物件の建築費だけではなく、解体の費用も発生するからです。もちろん、建て替える家の規模や性能次第で金額は変動し、ある程度安く済ませられることもあります。
反対にこだわった住宅にしたいなら費用は高くなり、相場以上にお金がかかることもあるでしょう。建て替えの場合は基本的に仮住まいが必要であり、リフォームの場合と同じで全体で70~120万円程度の支出があるとみておくことがたいせつです。
建て替えの費用について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
費用を節約したいならリフォーム
金銭的な部分で考えるなら、リフォームのほうが費用は抑えやすいです。全面的にリフォームをするとなると、結局新築する場合とほぼ同じくらいの費用がかかることもありますが、内容を限定するなら安価で済むことは少なくありません。
また、一度にまとめてリフォームせず、段階的に行う場合は仮住まいをしたり、トランクルームなどのレンタルスぺースを利用したりせずに済むことも多いです。
これらが不要になると数十万円から場合によっては100万円以上の節約になり、費用を削りやすい点でもリフォームのほうが金銭的な負担は少ないでしょう。
建て替えのほうが税金は優遇される
リフォームと建て替えの費用面だけでなく、減税制度や給付制度などで、どちらのほうが有利なのかも考えてみましょう。これらの制度の代表的なものといえば、「住宅ローン減税」や「すまい給付金」などが挙げられます。ただし、こういった制度を適用するためには、さまざまな要件を満たさなければなりません。
リフォームも建て替えも、住宅ローン減税制度は利用可能です。しかし、リフォームで住宅ローンを利用する人は少ないため、リフォームの場合は減税制度の対象になる人が少ないといえます。また、利用する場合もバリアフリーのリフォームであることや、100万円以上の工事をした場合など、細かい要件を満たす必要があります。
住まい給付金に関しては、住宅を購入した際に受けられる消費税軽減措置のため、そもそもリフォームは対象外です。こうしたことから、税金で優遇されるのは建て替えする場合といえます。
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【判断基準2】自由な間取りができるか
リフォームか建て替えかえの判断基準では、自由な間取りを再現できるかどうかも重要です。
内容 | メリット | デメリット |
---|---|---|
リフォーム | ・建物をそのまま残せる ・部屋のレイアウトをイメージしやすい |
構造によって制限がかかる |
建て替え | ・間取りの自由度が高い ・新しい設備の導入もしやすい |
費用が高い |
それぞれのメリットとデメリットを知り、どのような点に注目すべきか把握しておきましょう。
リフォームは構造によって制限がかかる
現在の住居の形をできるだけそのままにして改変するリフォームは、建物の構造次第で工事内容に制限が出ることがあります。配管の場所や柱の位置、壁の強度などさまざまな問題で間取りを自由に動かせないこともあり、自由度は低いです。
ただし、元ある家を壊さずに済むため、愛着のある家に住み続けたい人にはおすすめです。また、長年住んでいる家なら構造や家具などの配置も熟知しており、リフォーム後のレイアウト変更のイメージを持ちやすい点などは、メリットといえます。
建て替えは一から好きな間取りを考えられる
建物が丸ごと新しいものに変わるため、建て替えを選択するなら間取りの制限はほぼありません。建て替えが可能な土地なら、その土地面積の制限内で自由に建物を建築でき、注文住宅にするなら間取りを詳細まで指定できます。
こだわって間取りを考えるほど費用は高くなりますが、自由度が高く理想的な生活空間を再現しやすいという点は大きな魅力です。ただし、建て替えの際は接道義務を果たしているかどうかかの確認が必要であり、建物の敷地が2m以上道路に面しているかはチェックしておかなければなりません。
もし接道義務に違反する場合は、建て替えができないため注意が必要です。接道義務違反に引っかかる場合は、土地は狭くなりますが、位置をずらして道路に面するようにセットバックを行うなどして、接道義務を果たせるように工夫しましょう。
理想の間取りを実現するなら建て替えがおすすめ
間取りにこだわった住宅にしたいなら、建て替えがおすすめです。
内容 | 特徴 |
---|---|
リフォーム | 構造上の制限が出やすい |
建て替え | ・間取りが自由に変えられる ・新規設備の導入もしやすい |
新しいものを作ってしまうなら間取りは完全に自由であり、好きなように変更できます。また、間取りの変更に伴って新規設備の導入も可能であり、細部までこだわって生活空間を作りたい人は、建て替えがおすすめでしょう。
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【判断基準3】住宅がどれだけ傷んでいるか
住宅は消耗品であり、経年劣化していくのは避けられません。そのため、どれくらい傷んでいるかも重要なポイントであり、劣化具合に応じてリフォームと建て替えどちらが適しているかは異なります。
劣化したまま放っておくとさらに状態は悪くなるため、物件の状態を見極めて、早めに行動を起こすことが大切です。
設備の劣化が目立つならリフォーム
住宅設備の各部位の劣化が目立つなら、それぞれの場所をリフォームで対応することがおすすめです。住宅設備は箇所によって寿命が異なり、代表的な例だと次のものが挙げられます。
部位 | 平均寿命 |
---|---|
トイレ | 10年 |
給湯器 | 15年 |
外壁・屋根 | 10~15年 |
キッチン | 20~25年 |
お風呂 | 20~25年 |
洗面台 | 20~25年 |
フローリング | 20~30年 |
大体10年以降から消耗具合が激しくなるため、順次リフォームが必要になると考えましょう。使用やメンテナンスの状況によっても寿命は変化し、使用頻度が高いほど早く消耗し、こまめにメンテナンスをしているほど長く持ちやすいです。
リフォームは1箇所ずつ行っても構いませんが、複数箇所同時に行うとパック料金で割引になることもあります。少しでもお得にリフォームをしたいなら、住み替えが必要にならない程度で、かつパック料金が適用されるよう複数箇所のリフォームを何回かに分けて行うとよいでしょう。
構造に傷みがあるなら建て替え
住宅設備ではなく、住宅の基礎構造自体が消耗しているなら、建て替えを選択することが賢明です。構造自体が傷んでしまっている場合は、設備を全て新しくしたとしても建物が持たないことも少なくありません。構造や使用環境によって寿命は異なりますが、木造だと30年程度が寿命といわれています。
もちろん、設備と同じで構造も使い方次第で長持ちさせることは可能です。定期的に修理や修繕をしているなら寿命は延びやすく、平均相場よりも長く使えることは十分にあります。
あと何年住み続けるかで決める
住宅の消耗具合からリフォームか建て替えかを考える場合は、後何年住むかを考えることが大切です。数年から10年程度の期間なら、リフォームによって設備寿命を延ばすことがおすすめであり、今後数十年住み続けるのなら、建て替えをして全面的にやり替えたほうがよいでしょう。
リフォームか建て替えかは一概にどちらがよいと決まっているわけではなく、仮に建物構造が劣化していても、数年しか住まないならリフォームで間に合わせるということもあります。
現在の住宅の状態はもちろん、今後どれくらい住むかが重要な指標になるため、将来的なことを考えてどちらかを選ぶことが大切です。
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【検討しておきたい】リノベーションという選択肢もある
老朽化してきた住宅に対処する方法として、リフォームと建て替え以外ではリノベーションという選択肢もあります。
リフォームと言葉が似ているだけに混同されがちですが、厳密には定義が異なります。リノベーションの定義や特徴を知り、将来に向けての選択肢を増やしておきましょう。
リフォームとリノベーションの違い
リフォームは現在あるものを新しくすることが基本定義として考えられており、古くなった設備を新しいものに入れ替えることを指します。対してリノベーションは単に設備を入れ替えるだけではなく、内容を一新して、全く別のものにしてしまうことを指した言葉です。
例えば和室を洋室にしたり、キッチンの壁を壊して解放的なオープンキッチンを導入したりすることは、リノベーションといえるでしょう。古くなったものをそのまま新しくすることがリフォーム、より付加価値をつけて内容物を変更してしまうことがリノベーションです。
リノベーションはリフォームと建て替えの中間的な存在ともいえ、建物自体は変わらないものの、部屋の中は建て替えのように大幅に変更することもあると考えてもよいでしょう。
リノベーションのメリット・デメリット
物件の新たな価値を生み出しリノベーションには、メリットとデメリットがあります。メリットはデザイン性の大幅な変更が可能な点であり、既存の部屋のコンセプトを一新して、新築したかのように見た目を変えられます。
また、見た目の変更とともに設備自体も新しくなるため、家全体の若返りが期待できるでしょう。対してデメリットはリフォームと同様に構造上の問題は多少なりとも発生するということです。
部屋を革新的に変更するといっても、建築構造上変更できない部分はどうしても出てきてしまうため、建て替える場合よりは自由度が下がってしまうことは理解しておきましょう。
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まとめ
リフォームは建て替えよりも費用が抑えられるものの、間取り変更が難しく、こだわりすぎた結果建て替えよりも費用がかかってしまうことがあります。
一方で建て替えは、自由度は上がるものの、費用が高くつき、工期も長くなってしまいます。
古くなった家の今後について考える場合は、家族と話し合って明確に将来設計を立てることが大切です。リフォームも建て替えもそれぞれメリットとデメリットがあり、どのようなシーンに適しているかは異なります。将来のことを踏まえた上で適切な選択をし、理想的な住環境を手に入れましょう。